WOWOWで8月に放送されたドキュメンタリーのメモ。ベルリンフィルの、カラヤンの前任の常任指揮者であり、20世紀前半の最高の指揮者として崇められ、現代でも非常に高い人気を持つフルトヴェングラー。彼はナチスとの関与を疑われ、亡命し、戦後「非ナチ化」裁判を受けた戦争被害者でもある。ヒトラーと親愛の挨拶を交わしている(かに見える)有名な写真がある。本作は、この偉大なるマエストロの心の真実を探る。世界征服を企むナ...
ベルリンフィルの、カラヤンの前任の常任指揮者であり、20世紀前半の最高の
指揮者として崇められ、現代でも非常に高い人気を持つフルトヴェングラー。
彼はナチスとの関与を疑われ、亡命し、戦後「非ナチ化」裁判を受けた
戦争被害者でもある。
ヒトラーと親愛の挨拶を交わしている(かに見える)有名な写真がある。
本作は、この偉大なるマエストロの心の真実を探る。
世界征服を企むナチスは、その狂気の計画をカモフラージュするために
美しい芸術を悪用した。絵画、映像、スポーツ、そして音楽。
「プロパガンダの天才」と呼ばれたゲッペルスの下、芸術の崇高性で
人民のナショナリズムの高揚を鼓舞しようと突き進んでいった。
そこで使われたのが、ワーグナーなどを得意としたこの指揮者である。
「フルトヴェングラーはナチスの広告塔、最高の財産である」と言われた。
結果的には、人民の心を掌握し、ナチスにおおいに貢献することとなった
フルトヴェングラーだったが、彼は終戦の少し前にスイスに亡命している。
それは、ナチスから要注意人物としてマークされていることをリークして
くれる人物がおり、生命の危険を察知したからだった。
番組は、当時の「非ナチ化」の審議会の新資料や、ユダヤ人楽団員の証言
などをもとに、フルトヴェングラーが実は何を考え、何を求めていたのか
を探っていく。
フルトヴェングラーは、優れたユダヤ人演奏家を擁護したが、それは
ナチスの弾圧に反対しようとしたから、というものではなかったようだ。
この音楽家は、「優れた音楽を成したかった」のである。
ヒトラーの庇護下のベルリンフィルで演奏し続けたのは、それは
戦時にあって、演奏を継続できるオケがここしかなかったからだ。
彼がナチスの支配下を逃れようとしたのは、愛する音楽の中に
ナチスが乱入し、政治的に介入しようとしてきたからである。
彼が望んでいたものは、「ドイツ音楽を守ること」「優れたドイツ音楽を
演奏するという使命を貫徹すること」それだけだった。
結果的に見れば、そのことをナチスとヒトラーが求めていたために、
ナチスに協力する形になってしまったが、「ドイツ音楽を守った」という
点においては、後悔するところではなかった。
47年、「非ナチ化」裁判において無罪を勝ち取ったフルトヴェングラーは、
ベルリンフィルに復帰したが、シカゴ響ではユダヤ人音楽家のボイコットを
受けた。
51年にバイロイト復活祭でベト9番を振り、無罪から7年後の54年に亡くなった。
時代に翻弄された波乱万丈の生涯であった。
番組は、ざーっと事実を追うという形で終わり、期待したほどの内容では
なかった。60分という枠の中ではこの程度なのは仕方ないだろう。
私自身は特別フルトヴェングラーを「神」と讃えるものではないし、
実はこの方の演奏についてはあまりよく知らない(ごめんなさい)
新しい復刻版CDなども多々出ているようだが、今の時代に素晴らしい方が
たくさんいらっしゃるので、そちらまで手が及びませんで、すみませんです。
位ではないです。
あの池面指揮者はいい!
ハンサムな、おばさんですけど・・・