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花笑み*マイ・フェイバリット

ワンコと映画と演劇と音楽と本とおいしいものと… 好きなもの、お気に入りのものについて書いていきます。

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2013-12-28 (Sat)

「古事記―神代篇 」 三浦佑之

「古事記―神代篇 」 三浦佑之

「古事記」は中学でも高校でも大学でも習ったが、なかなか身につかない(^^;大人として一度ちゃんと読まねば、と思い、この本が出版された時に購入したのだが、積読となり、息子が持ち出して行って、行方知れずに。(本さん、ごめん)ちょうどEテレでこれをやっていた時に「あ、文庫があるんだー」と思い、再購入、やっと読みました、というわけです。しかし、なんというか、これは身に付きませんな、なかなか(汗知ってる部分...

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「古事記」は中学でも高校でも大学でも習ったが、なかなか身につかない(^^;
大人として一度ちゃんと読まねば、と思い、この本が出版された時に購入した
のだが、積読となり、息子が持ち出して行って、行方知れずに。(本さん、ごめん)
ちょうどEテレでこれをやっていた時に「あ、文庫があるんだー」と思い、再購入、
やっと読みました、というわけです。

しかし、なんというか、これは身に付きませんな、なかなか(汗
知ってる部分は「おもしろい!」と思って読むのだけどね、
他の部分が、まず名前が覚えられないのが大きなネックだ。
でも今度こそ、日本人として、次の「人代編」も読むんだぞー。

信じられないような、大スペクタクルだったり、
信じられないような展開や、信じられないようなオチ、
信じられないような処から信じられないようなものを出して、それから神が誕生する、
いやあ、私たちの祖先というのは、これは同じDNAを持っているとは
にわかに頷きがたいような、不思議な感動があります(^^
でも、イジメがあったり、妬みがあったりすると、やっぱ同じ祖先か、と思ったり。
しかしそれが陰湿でないところが、やはり古代文学の魅力だなぁと思います。
おおらかな気持ちになれるところがいいです。
Eテレでは先生が、社会や伝統・文化に関連させて解説されていて、それも
おもしろいなあと拝聴しました。

口語訳 古事記―神代篇 (文春文庫)口語訳 古事記―神代篇 (文春文庫)
(2006/12)
三浦 佑之

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2013-12-28 (Sat)

「夢を売る男」百田尚樹

「夢を売る男」百田尚樹

敏腕編集者・牛河原のいる丸栄社は、この出版不況の時代にも大きな収益を誇っている。なぜだ?それは、牛河原の周りには本を出版したいという人間が先方から大勢集まってくるからだ。出版リピート率もかなり高い。どうして?牛河原が提案するのは「ジョイント・プレス方式」というもの。それは現代人の心の中に大きくはびこり膨れ上がった「自意識」という魔物を心地よく刺激する秘訣があるからだった・・・「夢を見るには金がいる...

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敏腕編集者・牛河原のいる丸栄社は、この出版不況の時代にも大きな収益を
誇っている。なぜだ?
それは、牛河原の周りには本を出版したいという人間が先方から大勢集まって
くるからだ。出版リピート率もかなり高い。どうして?

牛河原が提案するのは「ジョイント・プレス方式」というもの。
それは現代人の心の中に大きくはびこり膨れ上がった「自意識」という魔物を
心地よく刺激する秘訣があるからだった・・・
「夢を見るには金がいるんだよ」と豪語する牛河原。
彼の編集者魂は本物なのか? あるいは似非編集者なのか?

話題作なので読んでみたのだが、えー、へー、こういう内容だったのかー
とまず思った。人を皮肉ったような内容は心地よいとは言い難いが、でも
「たしかにね」とうなづきながら読み進んでいく。
百田さんは、ご自身は、どんな気持ちで作家活動をされているのだろうか、
などと思ったりもしながら。
しかしラストにはそれなりのオチがあり、救いがある。
百田さんの情熱が熱く伝わってくる。
やはり良い本はよい。優れた読み物は人の心を打つ。残るべき作品は残る。
それが文学の歴史となり、また私たちの明日の読書意欲をそそる。

夢を売る男夢を売る男
(2013/02/15)
百田 尚樹

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2013-12-28 (Sat)

「総理の夫」 原田マハ

「総理の夫」 原田マハ

日本初の総理大臣となった相馬凜子。美人で優秀で人物も完璧、圧倒的な支持率を誇るこの女傑を妻に持つのは、鳥類学者であるお育ちのよい、人のよい、セレブなお坊ちゃまの日和。日和はこれも初の「ファースト・ジェントルマン」として妻を支えようとするのだが、根がお上品なので、政界にうずまくドロドロした策略や陰謀に呑みこまれないようにするだけで必死である。そんな中、たいへんな大事件が勃発! 凜子は引退してしまうの...

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日本初の総理大臣となった相馬凜子。
美人で優秀で人物も完璧、圧倒的な支持率を誇るこの女傑を妻に持つのは、
鳥類学者であるお育ちのよい、人のよい、セレブなお坊ちゃまの日和。
日和はこれも初の「ファースト・ジェントルマン」として妻を支えようと
するのだが、根がお上品なので、政界にうずまくドロドロした策略や陰謀に
呑みこまれないようにするだけで必死である。
そんな中、たいへんな大事件が勃発! 凜子は引退してしまうのか?

という、ドタバタの中にほのぼのとした夫婦愛を描く読み物。
軽いドラマやコミックのノリで楽しく読み進めることができます。
それでいていいかげんな内容では決してなくて、しっかりと調べあげられた
綿密な政界エンタテインメントになっているのはさすが原田さん。
ラストは「おやおや」「まぁまぁ」になってますが、それもまたよしでしょう。

総理の夫総理の夫
(2013/07/11)
原田 マハ

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凜子さんのイラストは帯で、外すとシンプルなアカデミックなイメージの赤表紙。
扉裏には他のイラストもあり、日和クン、草食系かっこいいのマイタイプです(^^



No title * by 藍色
どんどん引き込まれました。
この作者の作品はいつもワクワクさせてくれます。読んですっきりです。
トラックバックさせていただきました。
トラックバックお待ちしていますね。

No title * by めーちゃん
おたかさん、まきこ
最初の女性総理なる思ったのにぃ。

No title * by 美月
やはりクリントンさん、ですかね。

2013-08-29 (Thu)

「知の逆転」 (NHK出版新書 395)

「知の逆転」 (NHK出版新書 395)

サイエンスライター吉成真由美さんが現代の世界の叡智6人に今を生きることを多角的に問うたインタビュー集。BSなどでも放送されていたが、文章を読むことでさらに理解が深まる。最近いちばんの感動本かも。人々の考えや社会のムードに流されないようにしたい。しかし、自分の意見を持って、しっかりと考えているつもりでいても、実はこれまで生きてきたしきたりやならわし、学校や地域で学習したこと、様々なメディアによって知ら...

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サイエンスライター吉成真由美さんが現代の世界の叡智6人に
今を生きることを多角的に問うたインタビュー集。
BSなどでも放送されていたが、文章を読むことでさらに理解が深まる。
最近いちばんの感動本かも。

人々の考えや社会のムードに流されないようにしたい。
しかし、自分の意見を持って、しっかりと考えているつもりでいても、
実はこれまで生きてきたしきたりやならわし、学校や地域で学習したこと、
様々なメディアによって知らずしらずのうちに押しつけられたプロパガンダ
に影響されているかもしれない。
あふれる情報の海の中でも、視野狭窄にならず、圧力に屈せず、
真の善悪、物事の本質を見極め、「私であることの基本」となる道標を
示してくれる、清らかで、正直で、正義と勇気に満ちた先達の意見を知りたい、
そんな全ての人々の願望を満たしてくれる一冊となるものだと思う。

・ジャレド・ダイアモンド
世界が安定するためには世界中で消費の量がほぼ均一になる必要がある。
消費量の低い国は高い国に敵意を持ち、テロリストを送り、人口移動がおこる。
解決策は生活水準の均衡化。
歴史上、種の自己保存の道を選ばずに自滅した社会の例は、枚挙にいとまがない。
人生の意味を問うことには何の意味もない。ただ科学的に存在するということだけだ。

・ノーム・チョムスキー
市場主義だけではかならず破綻する。
資本主義とか社会主義とかの言葉はもう何の意味ももたなくなっている。
重要である物事こそ政府による規制が必須。「民主主義の限界」の指摘。
「核抑止」=「核支配」である。
アメリカの帝国主義的な力は凋落しつつある。
インターネットの集合知は何かを生み出すか?新しい民主主義を生み出すか?
→垂れ流しの情報は、情報がないのと同じ。何を探すべきかを知っている必要がある。

・オリバー・サックス
「脳」に関する話題が非常に興味深く、もっと他の著書も読みたいと思った。
「人間の脳は素晴らしい適応力を備えている」

・マービン・ミンスキー
人工知能の専門家としての話題が多岐に及び、とてもおもしろかった。
社会は集合知能へと向かうのか?
→集団の中に一般的な叡智があるとは信じられない。
 科学の叡智はいつも個人知能によってもたらされてきた。
 抑制しようとする「集団」の危険も大いにある。

・トム・レイトン
MITでアマカイ・テクノロジー社を設立していった話がとてもおもしろい!
ブラボー!である。ワクワクドキドキさせられる。

・ジェームズ・ワトソン
DNA二重らせん構造の発見者。おもしろい~!
われわれは思春期を延長しすぎてはいないか。
ほとんどの人は革新的でもなければ、リーダーでもない。
しかし全ての人に可能性があると言って時を無駄に過ごし、
本来みなそれぞれ異なっているのに、みな同じ、同じ花が咲く、と
ごまかしている。全てを平均化しようとし、社会が丁寧になりすぎている。
もっとも大事なことは、事実に基づいてものを考える能力。
事実の上に立って独立して考える能力を養うこと。

吉成さんのまえがき・あとがきだけでも、読む価値100%以上。
読んでよかった~!と思わせる必読書。
膨大な物事のほんの一部のことを知っただけなのだけど、それでも
「知的興味」「知るおもしろさ」を刺激されます(^^v

知の逆転 (NHK出版新書 395)知の逆転 (NHK出版新書 395)
(2012/12/06)
ジャレド・ダイアモンド、ノーム・チョムスキー 他

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* by めーちゃん
知的な言葉を言えても
行動が従わない馬鹿も多いのですよ。

富士通総研に就職した愚弟みたいに。
シンガポーまで留学して行くとこじゃない。
天下りの老人ホーム。

個人の行動が大きなムーブメントにならないでしょうか。
りんごの人みたいに。

* by 美月
社会はインターネットの集合知能へ向かうのか?
叡智は常に個人の知能によってもたらされてきた。
集合の中に一般的な叡智があるとは考えられない。
むしろ集合が叡智を抑制するおそれがある。
・・・だそうですよ。

2013-08-10 (Sat)

「ジュリアス・シーザー」 (光文社古典新訳文庫)安西徹雄・訳

「ジュリアス・シーザー」 (光文社古典新訳文庫)安西徹雄・訳

今一度、読んでみようと思い、家にある福田恒存・訳のものはフォントがめちゃ小さくて…、この新しい「新訳」版を買ってみました。ジュリアス・シーザー (光文社古典新訳文庫)(2007/01/11)シェイクスピア商品詳細を見る安西さんは大学の先生で、また「演劇集団<円>」などの多くのお芝居に関わってこられた方で、翻訳も今に通じる読みやすいものでした(^^何より興味深かったのは、巻末の「解題」という解説で、これはすごく得し...

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今一度、読んでみようと思い、家にある福田恒存・訳のものは
フォントがめちゃ小さくて…、この新しい「新訳」版を買ってみました。

ジュリアス・シーザー (光文社古典新訳文庫)ジュリアス・シーザー (光文社古典新訳文庫)
(2007/01/11)
シェイクスピア

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安西さんは大学の先生で、また「演劇集団<円>」などの多くのお芝居に
関わってこられた方で、翻訳も今に通じる読みやすいものでした(^^

何より興味深かったのは、巻末の「解題」という解説で、
これはすごく得したなあーというおもしろいものだったので、メモ。
(文章はコピペではなく、まとめアレンジさせてもらってます)

・群衆という名の怪物
ポンペイ→シーザー→ブルータス→アントニーと、目まぐるしく移動していく
群衆心理の恐ろしさ。
運命の変転を根本で支配している要因が、無定見きわまりない群衆の恣意
に他ならないということ。
さながら現代日本の「劇場政治」を見るようであるが、重要なのは、
大衆の愚かしさでも、政治家の演技のいかがわしさでもない、
こうした情況が生み出す根本的な価値の不確定性、恣意性である。
なにが起こったのかという事実自体が問題ではなく、それをどう見るか
という無定見・恣意的な解釈が、事実の意味を決定するということ。
まさに、価値の不確実性、一種のニヒリズム。

・演技者としてのブルータス
抜け目のない策謀家アントニー。しかしブルータスもまた無縁ではない。
「正義」「公明正大」という公的な価値の根源までが、根本的な不確実性、
恣意性に侵蝕されている。

・歴史劇でありながら、なぜ作者はこれほどまで人物の内面に深く
分け入っているのか。
人間というもの、その内面にとめどなく生起してやまぬ奇怪な心情、
想念、さらには妄想、幻影に対する強烈な関心。
作者の関心が、人間の外的行動から内面の情動へはっきり傾斜していく
跡が、作品群の研究に見て取れる。
パノラミックスな事件の連鎖としての年代記から、個人の人間的営為の
次元へと作者の関心が焦点を移し、公的な歴史の内部にその核心として
素裸となった私人の内的葛藤を凝視する場面を据えるという作劇法の発見。


「群衆の無知・無定見、にもかかわらず、政治権力の源泉となるというテーマ」
うーん、あるある、現代に、今そこに、あるある、あるよねー、
とひとりごちてる、無知・無定見な群衆の一人の私(^^;


* by めーちゃん
ブルータスおまえもか

愚弟にたいして
そういう状況です

群衆が
革命でも起こしてほしいと思うこのころ

* by 美月
>群衆が
革命でも起こしてほしいと

民主主義の限界、っちゅうやつでしょう。

2013-08-06 (Tue)

「七つの会議」 池井戸潤

「七つの会議」 池井戸潤

感想を書かないうちにNHKでドラマが始まってしまった。池井戸さんの小説はいつもおもしろい。今クールは池井戸さんの別枠「半沢直樹」が大ヒット中だが、ドラマと原作は別物だからいいのだけど、しかしあれでは全くの別物(^^;私の中の半沢直樹像が崩壊するので、ちょっとご遠慮している。こちらのドラマの「原島万二」は悪くはないが、しかし小説では原島万二が主人公というのではなく、8話構成の連作短編である。余談だけど「...

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感想を書かないうちにNHKでドラマが始まってしまった。
池井戸さんの小説はいつもおもしろい。
今クールは池井戸さんの別枠「半沢直樹」が大ヒット中だが、
ドラマと原作は別物だからいいのだけど、しかしあれでは全くの別物(^^;
私の中の半沢直樹像が崩壊するので、ちょっとご遠慮している。
こちらのドラマの「原島万二」は悪くはないが、しかし小説では
原島万二が主人公というのではなく、8話構成の連作短編である。
余談だけど「名もなき毒」の小泉孝太郎はいいと思う。
原作のムードをよく出していて、この中では一番いい。

小説は企業もの。利潤追求のための会社ぐるみの巨悪が次々と暴かれていく。
しかも筋金入りの体制的なものだった。会社存亡の危機。
何が正しいか、何を追及すべきか、
人として、企業人として、どうあるべきか、と言ったテーマで進んでいく。
まあ、いつの世も、どこの世界でも、正直なだけではエラくはなれない。
隠して、とぼけて、なすりつけて、責任問題にして、逃げる。ありがち。
現実と照らしてどうのこうの言うのは野暮だからやめる。
でも、この小説はおもしろいよ。おススメです。
しかしやっぱり、負け犬になっても正義の道を行きたいね。
ズルはしたくない、卑怯者にはなりたくないと思います。

「七つの会議」という意味がよくわからないのだけど、
「七つ」というとすぐ「七つの大罪」を思うけど、そうではなくて、
いくつかのお話、みたいな意味だとのことです。

七つの会議七つの会議
(2012/11/02)
池井戸 潤

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2013-08-06 (Tue)

「笑うハーレキン」道尾秀介

「笑うハーレキン」道尾秀介

道尾さんが高名な文学賞を多数受賞されている現代をリードする作家であることは存じていたが、これまで読んでいなかった。私の初・道尾作品。3.11後に新聞連載され、「希望」がテーマのひとつになっているとのこと。主人公はホームレスの家具職人の東口(ヒガシ)取引先会社の倒産のあおりをうけて自社を倒産させた。財産は工具とトラック一台だけ。妻はその会社の元社長のもとに行った。幼い一人息子も水の事故で亡くした。ここ数...

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道尾さんが高名な文学賞を多数受賞されている現代をリードする作家で
あることは存じていたが、これまで読んでいなかった。私の初・道尾作品。
3.11後に新聞連載され、「希望」がテーマのひとつになっているとのこと。

主人公はホームレスの家具職人の東口(ヒガシ)
取引先会社の倒産のあおりをうけて自社を倒産させた。
財産は工具とトラック一台だけ。
妻はその会社の元社長のもとに行った。
幼い一人息子も水の事故で亡くした。

ここ数年、ホームレスの男性を主人公にした小説が多い。
社会のどん底にまで落ちた人間を描く設定のお決まりになっている感あり、
あまり好きではない。
ホームレスの人を嫌っているというのではなく、小説にそういう設定で
出てくる男が、いつもかつては社会のトップであったり、知的リーダーで
あったりという設定と、また、それをよいこととする主観的な視点による
描き方が好きではない。

なので、この小説も読み始めは、あー、そうだったのね・・・と思った。
フシギな謎の若い女性が弟子入りしてきて、しかも足が悪い、というのも
ありがちな気がしないでもないし、これって実はお嬢様なんじゃないの、と
思ったりしながら読んだ(実際はどうであったかはネタバレなので×)

全体が不穏な空気の中で進行し、なんだかはっきりしない、モゾモゾするような
事件など起こり、疫病神はフル登場で出てくるし、
うーん、あんまり好きじゃない流れ…と思いつつ読んでいった。

しかし、後半、「ハーレキン」に言及した部分があり、その後、メインの事件に
突入していき、それを駆け抜けていくあたりはリズム感があり、楽しめた。
(具体的には第四章に入ってから)
ラストもささやかではあるが、この先に明るい光を投じ、読後感は悪くなかった。

が、私には、まあ☆2つくらい。たぶん、道尾さんを読むのはこれが最初で最後になるだろうな。

笑うハーレキン笑うハーレキン
(2013/01/09)
道尾 秀介

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No title * by 藍色
本当の自分を受け入れられるかどうかがこの作品のテーマなのではないかと思います。
最初に期待しすぎた感じはありますが、トータルの読後感は満足のいくものでした。
トラックバックさせていただきました。
トラックバックお待ちしていますね。

2013-07-24 (Wed)

「海賊とよばれた男」 百田尚樹

「海賊とよばれた男」 百田尚樹

2013年本屋大賞1位だった歴史経済小説。出光興産の創始者:出光佐三をモデルにした自伝的小説だ。主人公は国岡鐵造という名前になっており、あくまで「小説」であるが、読めば、石油業界のことや当時の詳しい情勢などをこれまで知らなくて本当にごめんなさいと言わねばならない感動のストーリーだ。出光(小説では国岡商店)の社風もすごいし、社員のみなさんもすごい。ただ辣腕というのではなく、確固たるポリシーを持って、その...

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2013年本屋大賞1位だった歴史経済小説。
出光興産の創始者:出光佐三をモデルにした自伝的小説だ。
主人公は国岡鐵造という名前になっており、あくまで「小説」であるが、
読めば、石油業界のことや当時の詳しい情勢などをこれまで知らなくて
本当にごめんなさいと言わねばならない感動のストーリーだ。

出光(小説では国岡商店)の社風もすごいし、社員のみなさんもすごい。
ただ辣腕というのではなく、確固たるポリシーを持って、そのもとに
ぶれることなく持てる力のかぎり精進努力するというところが素晴らしい。
私たち凡人はついつい文句を言って努力を迂回する道を探そうとするし、
なにかと右に左にと軸はブレブレ、あげくにただの保身に終始してしまったり
ということになりがちだ。

正しいと思う道を貫け、けして妥協するな、人を第一に大切にせよ。
儲けるのではない、人々を幸せにする、国を豊かにする、それが商売だ。
この主人公たちの生き方、仕事の仕方は、遠い昔に置き忘れてきた
日本人が共有してきた魂のDNAにダイレクトに語りかけてくる。
そのピュアな精神が多くの読者の心をつかんでいるのだろう。

イランの石油を買いにいくために、イギリス海軍の海上封鎖の中、
命がけの隠密航海でホルムズ海峡を渡る部分が実に手に汗握る迫力。
いちばん読ませるところだ。
百田さんの小説にはいろんなジャンルがあり、個々の好き好きもあるが、
この作品は全ての人に愛読されると思われる。
おじさま族にもおすすめの一冊。
上下2冊だが、スイスイと読めるので、3,4日で読了OK。


海賊とよばれた男 上海賊とよばれた男 上
(2012/07/12)
百田 尚樹

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* by ちゃいむ
前からすごく話題になってるよねー
私は百田さんのご本人のイメージが強くて
(おもろくて言いたいこと言う探偵ナイトスクープなおっさん)
まだなかなか本が読めてません。
「永遠の0」が積んである(汗)

Re: タイトルなし * by 美月

> 私は百田さんのご本人のイメージが強くて
> (おもろくて言いたいこと言う探偵ナイトスクープなおっさん)

私はツイッタでフォローしてるんですが、そちらのイメージもなかなか
個性的(^^;でありまして、、、(笑
まあ、本人と作品は別物とわりきって。(^^
これはマジで感動作だったよん。

2013-07-18 (Thu)

「冷血(上・下)」高村薫

「冷血(上・下)」高村薫

高村ミステリ作品の“合田雄一郎”が登場する。しかし、ミステリというよりは、ここ数年の純文学系作品だ。カポーティの「冷血」(読んでません:汗)への挑戦ということのようで、上下二段組みの、分厚い上下二冊に、みっちりと、事件資料的な内容が次々と引用されて推理が進められていくので、とても重たい。しかし、高村さん特有の、美しく無駄のない、リズム感のある流麗な文章で綴られていくので、読むのは苦にならない。なんと...

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高村ミステリ作品の“合田雄一郎”が登場する。
しかし、ミステリというよりは、ここ数年の純文学系作品だ。
カポーティの「冷血」(読んでません:汗)への挑戦ということのようで、
上下二段組みの、分厚い上下二冊に、みっちりと、事件資料的な内容が
次々と引用されて推理が進められていくので、とても重たい。

しかし、高村さん特有の、美しく無駄のない、リズム感のある流麗な
文章で綴られていくので、読むのは苦にならない。
なんというか、文が、生きてるんだ。
熱帯のジャングルに棲息する危険な動物のように、ひっそりと闇に潜み、
しなやかに樹を上り、鮮やかに枝へジャンプする、そしてまた、殺気を
消して、静かに次の獲物を狙う、そんな感じのする文章だ。

事件は東京郊外で起こった医師一家殺害事件。
犯人の戸田と井上は、34歳と31歳、未来あふれる年代のはずの二人だが、
何の関係もないふたりが、なぜ、何の接点もなかった一家を残らず
惨殺したのか。幼い弟までも。
動機なき冷血な殺人に彼らを駆り立てたものは何なのか。

犯人たちの内面の冷血が、一家の長女の13歳の日常と対比されて描かれる。
長女高梨あゆみが、ずば抜けた優秀な頭脳を持ち、友情や家族愛の中に
日々を送り、ささやかな悩みと反発と愛らしさを保ちながら健やかに成長
してきた少女が、初潮を迎えた日の夜に、何のいわれもない、知らない男に
いきなり声を出す間もなく惨殺される。

残忍な事件を起こさせるのは、「時代」のような、あるいは「偶然」
のような、犯人の外側にあるものなのか、それとも、
ただもう「犯人の内側」にある「なにものか」がなせるものなのか。
だとするならば、人間とは何なのか。
存在とは何なのか。
最初から決められたものなのか。
逃げられない運命を負ったものとしてヒトは生命を受けるのか。
ならば最初から救いはないわけなのか。
だとしたら、何のために私は存在しているのか?「私」とは何だ?

とても読み応えのある作品。高村さんの真骨頂という一作だ。
ただ非常に重く沈鬱であるので、体調のよい時に読まれるがよろしいかと。

冷血(上)冷血(上)
(2012/11/29)
高村 薫

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* by めーちゃん
私もこういうの
書きたいです。

目下苦戦中。

先日応募したのはボツでした。

* by 美月
めーちゃん
ちょいお久しぶりです。
なかなか難しいですねぇ。。。
がむばつてください。

2013-07-18 (Thu)

「KAMIKAKUSHI 神隠し」長野慶太

「KAMIKAKUSHI   神隠し」長野慶太

クリスマスイブの大混雑の中の荒天で混乱を極めるロサンゼルス空港の保安検査場で、忽然と一人の子どもが消えた。厳重な管理下で誰かが侵入することは不可能であり、また子どもがどこかにさ迷い出ることもありえない。なぜ?どこへ?誘拐?超自然現象?KAMIKAKUSHI?第4回日経小説大賞受賞作品。緊迫したミステリサスペンスの中に、アメリカ社会が抱える法制度の闇を抉り出し、家族の問題と再生、愛と信頼を描いており、ストーリー...

… 続きを読む

クリスマスイブの大混雑の中の荒天で混乱を極めるロサンゼルス空港の
保安検査場で、忽然と一人の子どもが消えた。
厳重な管理下で誰かが侵入することは不可能であり、また子どもが
どこかにさ迷い出ることもありえない。なぜ?どこへ?
誘拐?超自然現象?KAMIKAKUSHI?
第4回日経小説大賞受賞作品。

緊迫したミステリサスペンスの中に、アメリカ社会が抱える法制度の
闇を抉り出し、家族の問題と再生、愛と信頼を描いており、
ストーリーとしてはおもしろいと思った。
しかし、生意気を覚悟で書けば、文章があまりよろしくない。
文章に美しいリズムがなく、読んでいればつっかえる感じがする。
大賞を得る作品としてはそこをもうひとつか。

KAMIKAKUSHI   神隠しKAMIKAKUSHI 神隠し
(2013/02/21)
長野慶太

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2013-07-18 (Thu)

「55歳からのハローライフ」村上龍

「55歳からのハローライフ」村上龍

人世の折り返し地点をすぎた男女のそれぞれの「再出発」を描いた新聞連載の5編の中編集。鮮烈なデビュー作から常に時代の風の側面をするどく切り取った作品を次々と発表してきた村上龍さんが、こういう作品を書かれるというのは隔世の感ありだなぁと思いつつ読み始めたのだが、(こういう、というのは、いわゆる普通の人々が登場し日常が描かれる物語、という意味で)「中高年の困難さは経済的な格差を伴って多様化し、解決策は一...

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人世の折り返し地点をすぎた男女のそれぞれの「再出発」を描いた
新聞連載の5編の中編集。
鮮烈なデビュー作から常に時代の風の側面をするどく切り取った作品を
次々と発表してきた村上龍さんが、こういう作品を書かれるというのは
隔世の感ありだなぁと思いつつ読み始めたのだが、
(こういう、というのは、いわゆる普通の人々が登場し日常が描かれる物語、
という意味で)

「中高年の困難さは経済的な格差を伴って多様化し、解決策は一人ひとり
違う。『ものづくり日本の復活を』といった画一的な訴えではくくれないことに、
多くの物語の作り手やメディア側が気付いていない」
というご本人の言葉のように、これはやはり、まさしく「今」を切り取った
提言小説ということになるのだと気付く。

生きにくい世をどうサバイバルすればよいのか。
作家がテーマにしているのは、「人間関係」「信頼関係」ということ。
結局、答えは自分で見つけなければならない。
その時代ごとに先人たちが生き抜いてきたように、いつの世もどの世代も
どんなに生きづらくても生き残らなければならない。
中高年も、若者も、少年も、老人も。
とにかく生きる。負けないで生きる。
結論はこれしかないんだぞ、とドスのきいた低い声で、しかし共感と優しさを
こめて重々しく語られているような作品だった。じんわり励まされる。

55歳からのハローライフ55歳からのハローライフ
(2012/12/05)
村上 龍

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2013-07-16 (Tue)

「清須会議」三谷幸喜

「清須会議」三谷幸喜

生誕50周年記念三谷幸喜書き下ろし小説。信長亡きあとの日本の歴史を左右する五日間の攻防を「現代語訳」で綴るエンタテインメント作品。本能寺の変、「アチチ」と火をよけながら「イテテ、おなか切るのって痛い」と言いつつ、英雄信長が死んだ。跡目を継ぐのは、柴田勝家か、羽柴秀吉か。決着は「清須会議」でつけられることになった。お市の方は秀吉憎しで勝家側につくが、勘違いした勝家はお市の方と再婚できると有頂天、「香の...

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生誕50周年記念三谷幸喜書き下ろし小説。
信長亡きあとの日本の歴史を左右する五日間の攻防を「現代語訳」で綴る
エンタテインメント作品。

本能寺の変、「アチチ」と火をよけながら「イテテ、おなか切るのって痛い」
と言いつつ、英雄信長が死んだ。
跡目を継ぐのは、柴田勝家か、羽柴秀吉か。
決着は「清須会議」でつけられることになった。
お市の方は秀吉憎しで勝家側につくが、勘違いした勝家はお市の方と再婚
できると有頂天、「香のもの」と言われ「らっきょ漬け」を届ける勘違いおやじだ。
前哨戦のイノシシ狩りでもまさかの笑える敗北をきした秀吉は、
会議に必勝の策をもって臨むが・・・・
丹羽長秀、池田恒興、お市、松姫、寧、信長の息子たち、それぞれの思惑、
露骨で滑稽な頭脳戦、だましだまされ、うらをかき、ぬきでようとする
卑怯でなさけない心理戦、これこそが歴史の真実だ?!

愉快痛快、歴史オンチでも楽しめる、笑える、読むべし(^^

清須会議清須会議
(2012/06/27)
三谷 幸喜

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* by 珈琲党
怒濤の更新ですねぇ。
まるで、締め切り前の作家センセーか、夏休み末期の学生さんのようで。
最近読書量が減ったので、気力回復の意味も込めて、オススメのどれかを読んで景気づけをしてみようと思っています。

暑いときには涼しい部屋で熱い話がいいですかね。

* by 美月
珈琲党さん こんにちは(^^
読書ネタ、たまってますので、まだまだ更新しますよー(笑
大作家センセとしては一日10万字パワーでいきたいですね。

最近では読んでも若い頃のようにそんなに深く考えることがなくなって
なんとなく「ふーん…」と読み飛ばしてしまいます。
なので感想も上っ面だけになっておりますが、
それも、まぁいいか、と思ってしまふお年頃です(^^;←ダメだよ~ん



2013-07-16 (Tue)

「微笑む人」貫井徳郎

「微笑む人」貫井徳郎

エリート銀行員の仁藤俊実が妻子殺しで逮捕された安治川事件。動機は「大切な本の置き場所が足りなくなったから」という理由。事件に興味を持った作家の「私」は作品としてまとめようと関係者の取材を始める。仁藤は誰からも「いい人」と信頼されていた。しかしその一方で意外な冷酷な一面も浮かび上がってくる。さらに、仁藤の元同僚と大学の同級生らが不審な死を遂げていることがわかる。仁藤は本当に殺人を犯しているのか?作者...

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エリート銀行員の仁藤俊実が妻子殺しで逮捕された安治川事件。
動機は「大切な本の置き場所が足りなくなったから」という理由。
事件に興味を持った作家の「私」は作品としてまとめようと関係者の
取材を始める。
仁藤は誰からも「いい人」と信頼されていた。
しかしその一方で意外な冷酷な一面も浮かび上がってくる。
さらに、仁藤の元同僚と大学の同級生らが不審な死を遂げていることが
わかる。仁藤は本当に殺人を犯しているのか?

作者はラストを無責任に投げ出している、という感想も多かったようだ。
しかし「こういうものなんだ」という現実をそのままに提示していることが
作品の目的なのだと私は思った。
人とはわからないもの。自分の範疇に属さない人物も大勢いる。
全ての人のことが自分に全部わかると思ったら大きな間違いで、
ぜったいわからない、ぜったいありえない、なぜ?ということもたくさんあるのだ。
それが人というものだ、ということだろう。
明るい未来を向いた作品ではないが、読み応えのある一作だった。

微笑む人微笑む人
(2012/08/18)
貫井 徳郎

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2013-07-16 (Tue)

「空白を満たしなさい」平野啓一郎

「空白を満たしなさい」平野啓一郎

土屋徹生、36歳、サラリーマン。ある日会社の会議室で目覚め、家に帰ると、自分は3年前に死んでいることを知らされる。おりしも世界各地で、死んだ人間がよみがえる「復生者」のニュースが報じられる。徹生もその一人なのだった。徹生の死因は自死であると、会社の屋上から飛び降りたのだと聞かされるが、しかし、徹生自身には自殺するような理由が思い当たらない。愛する妻と幼い息子、幸福な家庭、やりがいのある仕事、なぜ自殺...

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土屋徹生、36歳、サラリーマン。
ある日会社の会議室で目覚め、家に帰ると、自分は3年前に死んでいることを
知らされる。
おりしも世界各地で、死んだ人間がよみがえる「復生者」のニュースが報じられる。
徹生もその一人なのだった。
徹生の死因は自死であると、会社の屋上から飛び降りたのだと聞かされるが、
しかし、徹生自身には自殺するような理由が思い当たらない。
愛する妻と幼い息子、幸福な家庭、やりがいのある仕事、なぜ自殺するものか。
もしかすると自分は殺されたのではないか。そうだ、突き落とされたんだ。
それなら思い当たることがある。あいつが犯人に違いない。目的は?
・・・・ミステリ仕立てで、自分の死の真相と、生の意味を追及する徹生の姿に
現代の抱える多くの問題と、生きる意義、幸福のあり方を問いかける長篇。

重くて長い作品なのだが、ミステリとして展開していくので、先が気になって
どんどん読み進んでいくことになる。
ラストに至るにつれて感動的なシーンが連続し、涙なしには読めない。

死んだらダメだよ、自分はひとりきりではないし、自分のかかわる幾多の
関係性の中で自分は生かされ、その関係の数だけ自分を支えてくれる人が
いる。苦しい時は、それが自分の全部を支配してしまうと考えないことだ。
自分は分けられる。自分の大切な人のために最後まで生きろ。

「救われた」「生きる力がわいた」と感動の声が多くアップされていた。
おっしゃる通り、なのだが、
私は、徹生が犯人じゃないか?と疑う男が、もう、すごく、すごーーーーく、
イヤなヤツで、いっしょの空気も吸いたくない卑怯なゆがんだ思考で、
その不快感でいっぱいになってしまい、読後の熱い感動の妨げとなって
しまいました(^^;;;
三部作は「決壊」が一番よかったな。でもしばらく平野さんはいいわ。


空白を満たしなさい空白を満たしなさい
(2012/11/27)
平野 啓一郎

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2013-07-16 (Tue)

「私とは何か――「個人」から「分人」へ 」平野啓一郎

「私とは何か――「個人」から「分人」へ 」平野啓一郎

「個人」という言葉、individual、もうこれ以上分けられない「私」となる。個人は、分けられない。当たり前だ。しかし、人格はどうだろう?あなたといる時の私、家族といる時の私、仕事場での私、趣味に没頭している私、私の中には様々な私がいる。私は、相手によって変わるいくつもの「私」がある。「本当の自分」は、ひとつ、ではない。いろいろな自分がいてよいのだ。たったひとつの「本当の自分」なんて存在しない。対人関係ご...

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「個人」という言葉、individual、もうこれ以上分けられない「私」となる。
個人は、分けられない。当たり前だ。
しかし、人格はどうだろう?
あなたといる時の私、家族といる時の私、仕事場での私、趣味に没頭している私、
私の中には様々な私がいる。私は、相手によって変わるいくつもの「私」がある。
「本当の自分」は、ひとつ、ではない。いろいろな自分がいてよいのだ。
たったひとつの「本当の自分」なんて存在しない。
対人関係ごとに見せる複数の顔が、すべて「本当の自分」である。

という「分人」dividual という思想について述べられている。
私とは何か?自分はこれからどう生きていくべきなのか?
現代人の実情に適う思想を一から考えて行こうという書である。

平野氏の新作「空白を満たしなさい」を読むために、その分人思想
というものを知っておこうと思い、読んだ本。
「分人」は、「決壊」「ドーン」そして「空白を満たしなさい」
と続いて語られている平野氏のテーマである。

おそらく、平野氏にはキリスト教的思想が根幹にあるので「分けられない」
「絶対」の「私」というものが大きなテーマになっているのではないかと
思う。しかし、一般的な日本人的仏教的思考では、それほどそのことが
強く意識されることはなくて、普通に個人として分人を生きることを
ごくあたり前に行っているように思う。
それともそう思うのは私の脳ミソがボケただけかもしれないが。
というわけで、それほどガツン!とくるわけでもなく「空白を~」に
進んだのだけど、若い人たちには「これで救われた」と言う感想も
多かったようだ。
「私」で悩まなくなった、ということは、トシの功か、老化か(^^;

私とは何か――「個人」から「分人」へ (講談社現代新書)私とは何か――「個人」から「分人」へ (講談社現代新書)
(2012/09/14)
平野 啓一郎

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2013-07-16 (Tue)

幸福になる「脳の使い方」 茂木健一郎

幸福になる「脳の使い方」 茂木健一郎

またしても題名につられて買ってしまった本。新書はほんとに「題名・命」だなぁと思ふナリ(^^子どもの頃は多動症で自家中毒で潔癖症、人見知りで人間関係が苦手、ストレスの塊のような筆者であったのに、今現在のこの茂木健一郎がいるのはなにゆえか。「幸福とは何か」「幸せになりたい」常に問いかけられるテーマであるが、現代においてストレスと無縁で暮らすことは不可能である。どうすればストレスから解放されて幸せを実感...

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またしても題名につられて買ってしまった本。
新書はほんとに「題名・命」だなぁと思ふナリ(^^

子どもの頃は多動症で自家中毒で潔癖症、人見知りで人間関係が苦手、
ストレスの塊のような筆者であったのに、今現在のこの茂木健一郎が
いるのはなにゆえか。
「幸福とは何か」「幸せになりたい」常に問いかけられるテーマであるが、
現代においてストレスと無縁で暮らすことは不可能である。
どうすればストレスから解放されて幸せを実感できるようになるのか?

結論から言うと、それは自分次第。
自分の考え方ひとつで人生の幸福度はかわる。
思考法を変えることで人は幸福にもなれるし、不幸にもなるのだ。
では、幸福になれる思考法について具体的に考えよう、という内容。

・「絶対幸福」というのはない。どんな幸福も比較で揺らぐ。
 幸福を決める尺度はひとつではない。
・脳から不安をなくす「スルー力」
・年齢を重ねるほどにしなやかに自由になれる力
・毎日の「今、ここ」に幸福を見出す力
などなどについて述べられている。
自分から幸せを内側に呼び込んで暮らそう、そうすれば幸せがやってくるよ、
というポジティブシンキングの教えである。

あとがきの「赤毛のアン」について書かれている部分がよい。
茂木さんの人生の書が「アン」であることは有名(^^

――「赤毛のアン」から学ぶ「幸せになる力」は、あきらめないこと、
そしてひたむきに生きること。
あきらめない気持ちを持ち続けることが、セレンディピティを呼び込む。――

私もアンシリーズの大ファン(*^^* ほんとに名作だよなあ~♪

幸福になる「脳の使い方」 (PHP新書)幸福になる「脳の使い方」 (PHP新書)
(2013/01/17)
茂木 健一郎

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2013-07-15 (Mon)

「英語を学ぶのは40歳からがいい」 菊間ひろみ

「英語を学ぶのは40歳からがいい」 菊間ひろみ

題名に誘われてついつい手にとってしまう新書。「おおっ!」という内容のものも少なくないが、「なんだかなぁ」というのもけっこうあるね(^^;←本書の内容が悪いというのではありません。40歳を過ぎてからの方が学ぶ目的がはっきりしてるので、しっかりくじけずに勉強を続けられるよ、というのが「~がいい」の理由だそうで、これは、ありゃ、また題名につられちゃったよ(^^;の部分。力がつくという「3つの習慣」は、1:...

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題名に誘われてついつい手にとってしまう新書。
「おおっ!」という内容のものも少なくないが、「なんだかなぁ」というのも
けっこうあるね(^^;←本書の内容が悪いというのではありません。

40歳を過ぎてからの方が学ぶ目的がはっきりしてるので、しっかり
くじけずに勉強を続けられるよ、というのが「~がいい」の理由だそうで、
これは、ありゃ、また題名につられちゃったよ(^^;の部分。

力がつくという「3つの習慣」は、
1:音読、2:多読、3:必要最低限の英語表現を覚える
ということで、これもこれまでもどこでも言われてきたことではある。

なので、特に新鮮な内容ではないけれども、
具体的に何をすればいいかを例を出して示してくれているところ、
「日本人が間違えやすい英語表現」という章が復習になったという点、
巻末付録の「音読して覚える44の表現」が復習に使えるかなの点、はよし。
ということで、英語が得意ではない中年以降の初心者を勇気づけてくれる
書ではあると思った。
しかしなんだかんだノウハウを読んでも、実際に毎日継続しなければ
何にもならないわけで、これまでいくつもこういうのを読んだよなあと、
ならばやれよ、と自分に思う、なさけない私である(^^;
何事にも近道はないのだ。わかってるんだよ。

英語を学ぶのは40歳からがいい 3つの習慣で力がつく驚異の勉強法 (幻冬舎新書)英語を学ぶのは40歳からがいい 3つの習慣で力がつく驚異の勉強法 (幻冬舎新書)
(2012/09/12)
菊間 ひろみ

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2013-07-15 (Mon)

「ペコロスの母に会いに行く」岡野雄一

「ペコロスの母に会いに行く」岡野雄一

しばらく[books]カテゴリの更新をしてなかった(なんと2月から!(^^;が、本は読んでいたので、これからボチボチやっていこうと思います。これは岡野さんご自身のお母様の介護を漫画で綴られたもの。亡くなられたお父様の思い出もたくさん込められており、愛情に満ちています。「美化している部分もあります」「想像もあり」「実際はもっとハード」というお話をされているのをTVで拝見しました。子としては、元気で長生きしてく...

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しばらく[books]カテゴリの更新をしてなかった(なんと2月から!(^^;
が、本は読んでいたので、これからボチボチやっていこうと思います。

これは岡野さんご自身のお母様の介護を漫画で綴られたもの。
亡くなられたお父様の思い出もたくさん込められており、
愛情に満ちています。
「美化している部分もあります」「想像もあり」「実際はもっとハード」
というお話をされているのをTVで拝見しました。
子としては、元気で長生きしてくれることが一番うれしいわけですが、
現実は過酷で、生半可なものでないのは想像に易いこと。
時には、いや毎日が、ハラのたつこと、なさけなくて泣けてくること、
なげ出したくなることの連続であることがわかります。
いつも平常心で、優しい気持ちで接するなんてことが難しいのは
言うまでもない。
私も義母91歳を施設に預けており、何も言えた立場ではないけど、
いろんな段階を経て、だんだんペコロスさんの境地になってきた。
長生きしてほしいとか、安らかであってほしいとか、そういうのを
超えて。「人生ってたいへんだなあ」と思うのがいちばんというか。
誰もが来た道、誰もが行く道。
不安もあり、諦観もあり、せいぜい「今」を楽しく豊かに過ごしたいと
考えるわがままなヨメであります。ごめんなさい。
もし私が「母」の方になったなら、「子」や家族には幸せな気持ちで
毎日過ごしてもらうことが一番の希望だと思う。たぶん。
そう思うことを言い分けにして、日々を送っておる次第です。


ペコロスの母に会いに行くペコロスの母に会いに行く
(2012/07/07)
岡野 雄一

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2013-02-02 (Sat)

「エデン 」近藤史恵

「エデン 」近藤史恵

あの大感動の「サクリファイス」の続編。三年後、チカはスペインを経て、フランスにいる。ついにツール・ド・フランスに挑むのだ。とにかく今回もまたおもしろい!友情と駆け引き。悪い噂の真相は?チカはツールを完走することができるのか?自転車ファンでなくても、何の予備知識がなくても、必ず夢中になって一気に読んでしまうこの興奮と感動の物語、あれこれ言うこともない、とにかく読んでみるべし。ツールのこともいろいろわ...

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あの大感動の「サクリファイス」の続編。
三年後、チカはスペインを経て、フランスにいる。
ついにツール・ド・フランスに挑むのだ。
とにかく今回もまたおもしろい!
友情と駆け引き。悪い噂の真相は?
チカはツールを完走することができるのか?
自転車ファンでなくても、何の予備知識がなくても、
必ず夢中になって一気に読んでしまうこの興奮と感動の物語、
あれこれ言うこともない、とにかく読んでみるべし。
ツールのこともいろいろわかって、おもしろいよ~!

エデン (新潮文庫)エデン (新潮文庫)
(2012/12/24)
近藤 史恵

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No title * by めーちゃん
若いころは自転車で暴走していましたが、
競技用のものは、よう、乗らんです。
で、お子様を乗せるの、
あれ、どないするんでしょう。
スタンド立てた状態で乗せるのかな。。

No title * by のりりん
私も 「サクリファイス」「エデン」
両方読みましたが
心理状態が わかりやすく描かれていて
好感の持てる作品でした。
自転車レースなど 全く知りませんでしたが
ああ こういう世界もあるのだなあと
楽しみながら読めました。

Re: No title * by 美月
のりりんさん
いつもありがとうございます。
ホントに感動的な作品でしたね。
ふしぎなジャンルでありました。
3編目も出てますね。
こちらは短編集らしいですが。
まあ、文庫になってからですね。
最近は本棚健全化のため、文庫以外は買わないと
自戒しています(^^

Re: No title * by 美月

> で、お子様を乗せるの、
> あれ、どないするんでしょう。

お子さま用椅子は、自分が小さい頃、父に乗せてもらっていましたが(^^;
その後は出会ってないので、わかりません。
若かった父が、前に私を、後ろに母を乗せて、野山を走っていきました。

No title * by ちゃいむ
エデンまだ買ってなかったー
早く読まないと、
……という本がたくさんありすぎて(汗)
近藤さん、本当にすごいなあと思う。
サクリファイスでは、まったく取材しなかったって書いてあったもんね。

Re: No title * by 美月
> エデンまだ買ってなかったー
> 早く読まないと、
> ……という本がたくさんありすぎて(汗)

そうなのよね、本棚エコスリム計画にもかかわらず、本が増える(^^;
買わないぞ、と思ってても、もう一人の私が「これは買っとかないと」と囁くw

近藤さんね、私、もっと大きくて筋肉質のアネゴ肌系の方だと
勝手に思っておりました、ら、ぜんぜん別のタイプの方で。
作品から想像するのとは違うものなんですねー
それだけそういう違うものが書ける、ってのがまたすごいなー

2013-02-02 (Sat)

「紙の月」 角田光代

「紙の月」 角田光代

「八日目の蝉」などの犯罪をテーマにした角田さんの作品群の一つで、公金横領の逃亡犯の女性を主人公にしている。「Paper Moon」と言えばオニール父娘の映画が有名だが、この小説も詐欺の話だ。It's only a peper moon. あれはただの紙の月だよ、というのは家族写真の背景にハリボテの月がよく使われた一時期を指して、幸福な時、それも刹那的であったり、偽物であったり、過去のものであったり、というような郷愁と切なさと諦観を...

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「八日目の蝉」などの犯罪をテーマにした角田さんの作品群の一つで、
公金横領の逃亡犯の女性を主人公にしている。
「Paper Moon」と言えばオニール父娘の映画が有名だが、
この小説も詐欺の話だ。
It's only a peper moon. あれはただの紙の月だよ、というのは
家族写真の背景にハリボテの月がよく使われた一時期を指して、
幸福な時、それも刹那的であったり、偽物であったり、過去のものであったり、
というような郷愁と切なさと諦観を孕んだものを象徴している。

主人公:梨花は41歳の銀行の契約社員。1億円を横領し、タイを逃亡中だ。
そこに至るまでの、梨花の日常が、群像劇の形で描かれていく。
何不自由ない、夫に守られた幸せな主婦の典型であったような梨花、
しかしその内面の空疎さは、誰にもはかり知ることのできないものだ。
夫との小さな違和感、微妙なズレ感、そしてそれを満たしてくれた若者、
お金、つかの間の充実感、夜空の月に上ってしまいそうな体を突き上げる
幸福感。自分が確かに生きているという実感。

犯罪への道は、誰の前にもひそかに開かれている。
少しばかりの焦燥と、不満と不快さ、それを消してくれそうな「何か」、
それらがあれば、あなたも私も、誰もが目の前にある1億円に手を
出してしまわないともかぎらないじゃないか、そんな説得力のある
角田さんの濃厚で、かつヌケ感のある冷めた文章がすばらしい。
いつもながら感服してしまう力量の豊かさ。
女性なら誰もが「うん、うん」とうなづきながら読むだろう。

紙の月紙の月
(2012/03/15)
角田 光代

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